標石よりも探す過程がメインの三角点探訪ブログ。
2013/07/07(日)
石巻市の旭山(県立自然公園旭山)内にある地殻変動観測点。

本来の使い方ではないが、いつも三角点探索のネタを提供してくれる国土地理院の神サービス「基準点成果等閲覧サービス」。一度使ってみれば分かることだが検索機能が結構便利で、等級別はもちろんのこと、三角点以外の基準点や地元自治体が設置した公共基準点まで表示してくれる。その三角点以外の基準点の中でも「その他基準点」のカテゴリに分類されている点は特殊な「レア物」が多く、その中に私の大好物な多角点や図根点などが含まれていたりするのだ。
以前、少なくとも震災前には牡鹿半島付近で、この「その他基準点」を検索すると女川原発近くの寄磯浜に「クラスタ観測点」という聞いたこともない点が表示されていた。“牡鹿”という点名を付けられた、その謎の点が気になったので行ってみると結局電子基準点の一種のようなものだった。電子基準点と何が違うのか疑問に思いつつも、珍しい物を見たんだという自己満足感に浸りつつ帰った思い出がある。震災の約1ヶ月前のことだった。

最近、その牡鹿半島付近で検索すると見たことの無い「謎点」が沢山表示されるようになった。

chikakumap.jpg
点名が全て「牡鹿」+数字というもので、牡鹿半島とは関係なさそうな旧河南町や旧雄勝町にまで広範囲に設置されている。前述のクラスタ観測点と、鮎川の電子基準点が既に“牡鹿”という点名になっているので大変紛らわしい。(※大きいマップは→コチラ
詳細を確認したところ、これらは全て「地殻変動観測点」だった。震災後に新設されたのかと思ったら、平成21年に既に設置されていたらしく、単に閲覧サービスで表示されていなかっただけのようだ。改めてクラスタ観測点の“牡鹿”を見てみたら、種別が地殻変動観測点に変更されていた。確かに付属標にはそう書いてあったのだが、それでは本体の「GPS機動連続観測点」という別名称(クラスタのことか?)は一体何だったのか?今はこの付属標がメインなのだろうか?
マップを見ると分かるように牡鹿1~6のうち、「牡鹿5」という点は存在しない。これは旧クラスタ観測点を地殻変動観測点と見なすことにより、“牡鹿”を「牡鹿5」として使っているからなのだろう。

さぁこうなったらもう、いてもたってもいられない。いつもの悪い癖発動である。早速この5ヵ所の地殻変動観測点とやらを見に行ってみることにしよう。

ojika1_1.jpg
数字の順番通りということで、まずは“牡鹿1”を目指す。“牡鹿1”は以前、二等三角点“朝日山”と一等磁気点“石巻”で訪れたことがある旭山に設置されているらしい。県立公園らしく、途中から徒歩になるものの山頂まで車道が続いている誰でも簡単に登れる山で、しかも三角点とレアな磁気点、今回の地殻変動観測点の3つの点を1ヵ所で見ることが出来る1粒で3度もおいしい山である。基準点探索初心者はもちろんのこと、ガチなマニアにも超オススメなスポットであるといえよう。
三陸道矢本ICより県道43を北へ向かい、広渕でR108へ左折する。そこから1kmくらい進んだ画像の交差点を左折する。【現在地

ojika1_2.jpg
県道151を1.8kmくらい進むと旭山の入口がある【現在地】。ここを右折し、さらに車で進む。

ojika1_3.jpg
前回と同様にここからは徒歩で進むことになる【現在地】。さすがに山頂までは無理としても、ここまで車で来られるのは大変ありがたい。

ojika1_4.jpg
車道にしては急な坂を登り、二等三角点の手前まで来た。GPSを見ると、今回の目的地はここの右の方にあるはずなのだが…。

ojika1_5.jpg
右を向くが、電子基準点や、以前熊ヶ根二口温泉で見た地殻変動観測点のようなステンレス製のピカピカな観測機器が見当たらない。視界に入ってくるのは白っぽいポール状の「何か」のみ。何だろう?

ojika1.jpg
何これ?
可搬式のコンクリート台座の上に電柱をぶった切ったような白い柱が載っている。今まで見た電子基準点とは似ても似つかない質素な造りだ。コンクリには金属標が埋め込まれているようだ。

ojika1_6.jpg
「つくばに繋がってるよ」といったような、ありがちな説明書きプレートが付いてなく、代わりに「地殻変動観測点 国土地理院」といった、これが何であるかのプレートが申し訳程度に付けてあるのみ。点の記には、この柱のことを「GPS観測ピラー」と書いてあるので、内部にはGPSのアンテナと受信機、それとデータの記録装置または送信装置が最低限組み込まれている必要がある。そういえば、周りを見回してもこれの電源になる電線や分電盤などが見当たらない。電源が無いと動作しないのでバッテリ駆動なのだろうか?
それにしては点検用のカバーが無かったりするので、もしかするとこれは本当にただの「柱」なのかもしれない。データが必要なときにGPSの観測器を持ってきて上部に設置し、観測するといった“箟峯山”(のの岳)で見た天測台のような使い方である。

ojika1_7.jpg
金属標です。番号は0401。
点の記にも金属標と書かれているので付属標ではない、つまりこっちがメインですよ(柱は飾りですよ?)といった意味なのでしょうか?

ojika1_8.jpg
“朝日山”から見た“牡鹿1”。
前回来た日は2009年5月25日。“牡鹿1”の選点・設置は2009年(平成21年)5月28日と点の記に書いてありますから、設置3日前に来たということなんですね。分かってれば作業してるとこ見学したかったなぁ。


先日、舘沢省吾氏より大変興味深い資料を送って頂きました。舘沢氏の承諾を取った上で公開致します。

・ポールの正体
ojika6_tachisawa.jpg
これは“牡鹿6”のポール(ピラー)です。国土地理院より提供された画像とのことです。
見ての通り、円柱の上にGPSアンテナと思われるような物を取り付けて観測しているのが分かります。つまりこのポールには何の観測装置も搭載されていない「ただの柱」ということになります。上の記事中にも書きましたが、このやり方はまさに天測台のような使い方です。GPSアンテナを付けられる巨大な三角点標石みたいなものとも言えそうです。

・幻の「牡鹿5」
舘沢氏によると、“牡鹿5”は以前存在したそうです。
実はこのタイプの地殻変動観測点は牡鹿半島周辺だけではなく、日本全国に7エリア、6箇所ずつ設置されていて、牡鹿半島のはその1エリアだったのです。当然、牡鹿半島にも6箇所ありました。

舘沢氏提供の日本全国にある地殻変動観測点のデータです(CSV形式) → tatisawateikyou.txt (4KB)
※FC2の制限によりCSVでupできないため、TXT形式になっています。
 右クリックして「名前を付けて保存」後、拡張子をTXTからCSVに変更し、EXCEL等で開いて利用してください。


“牡鹿5”は以前寄磯小学校の北150m付近にありましたが、携帯電話の基地局建設のため廃点となったようです。


大きな地図で見る
“牡鹿5”跡地は現在こんな感じになっています。確かに基地局がありますね。

・設置時期と点の記の矛盾
上にある舘沢氏提供のデータを見ると地殻変動観測点の設置時期は1994~1995年となっており、牡鹿半島周辺のは1994年となっています。ところが点の記を見ると、選点・設置が平成21年(2009年)5月となっています。これはどういうことなのでしょうか?
点の記の要図を良~く見ると「地殻変動観測点」とされているのはポール(ピラー)ではなく、付属標のほうとなっています。こういう場合は電子基準点のように点名の後に「(付)」を付けて「牡鹿1(付)」とすべきだと思うのですが、しなかったようですね。もしかすると付属標も1994年にポールと同時に設置されていたのかもしれません。
“牡鹿1”~“牡鹿6”の点の記を見比べると選点・設置・観測日が平成21年5月28~29日のたった2日間で、しかもそれを1人の担当者でこなしています。この事から、当日は観測のみの作業しかしていないと推測されます。ということは、やはり付属標はポール設置時に同時に設置されたものと考えるのが自然でしょう。
つまり1994年にポール(ピラー)と付属標が設置され、その後2009年に付属標のみを「地殻変動観測点」として選点・観測し、点の記に記載したものと思われます。
※この事については国土地理院に確認を取っていません。あくまでも私の推測ですので間違っている可能性があります。

・クラスタ観測点って…?
いわゆる「クラスタ観測点」である“牡鹿”は点の記には平成20年(2008年)選点・設置と記載されていますが、舘沢氏によると2006年に設置されたとのことです。実際、舘沢氏は2007年8月にここを訪れているそうです。
確かに点の記には「クラスタ」とは一言も書かれておらず「地殻変動観測点」となっており、要図には付属標がその「地殻変動観測点」であるような描かれ方をされています。
舘沢氏は“牡鹿5”が基地局建設により廃点になった後、「クラスタ観測点」を設置したと教えてくれましたが、また時期が矛盾してしまうので、これは“牡鹿5”の代替として「クラスタ観測点」の付属標を地殻変動観測点として指定したということなのでしょう。
つまり「クラスタ観測点」とは2006年に付属標とともに設置された電子基準点とほぼ同じな観測機器で、点の記に書かれているのは、その付属標を2008年に地殻変動観測点として選点したものということになります。

おかげでいろいろと謎が解けました。舘沢さん、本当にありがとうございました。(2014/9/15追記)

MAP

地形図

DATA
基準点コード:MPA5741518402
緯度:38°29′23″.6286
経度:141°10′54″.8871
標高:164.86 m
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